相似

#2 11月30日木曜日

     校舎の裏手にあるゴミ焼却炉の前で、数人の男子生徒が集まっていた。
    「実テ、サトルがまたトップ取ったな」
    「順当でしょ」
     白い空からチラチラと降ってきた雪に、皆は顔を見合わせた。ゴミ箱一つ抱えて外に逃げて来たものの、そろそろ教室に戻らねばならない。午後の授業の後の掃除時間も終わり、ホームルームが待っている。

     俺の席、ジュウと近いんだよ。教室に帰りたくない。
     わかる。暗いし、頭も悪いし、キモイ。怖い時ある。
     サトルにあいつの事、なんとかしてもらえないのか? 同じ家に住んでるんだろ?
     かかわりたくないだろー。
     だよな。
     ジュウが持ってる教科書、前の学校のらしいけど、ラクガキだらけだった。
     俺も見た。マジックですげー書かれてた。
     やっぱり、前の学校でも嫌われてたんだな。


     冷たい風に顔をすくめながら、女子たちが連れだって校舎を出て来た。
    「2年の仁科千郁(にしなちふみ)が、赤撞(あかつき)弟に告られたってよ」
    「ジュウのこと、アカツキオトートとか言う呼び方やめろよ。サトルと兄弟なんてマジ許せないんだけど」
     学校から駅へと向かうスクールバスに乗り込み、周囲の生徒たちをはばかることなく、大声で話す。

     仁科、誰にでもいい顔するけど、あのジュウの相手までしてたんだ。
     バッカ、違うに決まってんじゃん。
     仁科はサトル狙いなんだよ。
     ああ、赤撞兄狙いか。
     だから、サトルとジュウをひとくくりにすんなって。
     確かに他人だよな。でも、しょうがないじゃん、同じ名字だし。
     同じ名字ってだけで、全くベツモノ。
     超グロメン。生理的に無理。
     アレって、性格がそのまんま顔に出てない?


     職員室で1年4組の担任と副担任がコーヒーを飲みながら談笑していた。
    「そういえば、転入してきた赤撞は、2組の赤撞早采の弟なんですね。仲は良いんでしょうかね」
    「いいわけないだろう。あんなに違うんだから」
     教師の多くは職員室から出払っていたせいで、二人の舌は滑らかだった。

     再婚なんですか?
     ああ。ジュウの母親と話をしたが、スピード婚ぽいな。
     だから、ジュウはいろんな事が受け入れられないのかな。態度が気になりますね。
     単に嫉妬だろ。サトルは友人も多いし成績も良いからな。
     母親の再婚相手の息子が自分と同い年なんて、複雑でしょうねえ。
     比較されて、劣等感の塊になってんじゃないか?
     ちょっとかわいそうになってきました。
     かわいそうなのはサトルだろ。あんな不気味な弟いらない……あ、ヤバ、今のはオフレコな。
     大丈夫ですよ。みんなそう思ってますから。



    次の話へ≫ / 小説一覧に戻る≫

入口に戻る≫ / このページのトップへ▲