WISER MOON

【あらすじと目次】

●あらすじ●

<PG12> 12歳以下の方は成人同伴者の了承の元にお読みください。(暴力描写あり)
遠い昔、ある場所で王と呼ばれる者に使えていた女は、その王を惑わす悪魔として、月に幽閉される。
女の恋人で王家の役人だった男は、彼女の逃亡を助け、代わりに月に囚われる罪人となっていた。
異世界へと堕ちた女が、恋人を失い本物の魔女となり月の無い夜にのみ現れる、と人々の間で語られていたが……。
二つの世界で巡る命のストーリー。
#1=1000字程度、長編、現在連載中。終了未定。(最新:#2)

 

●目次●

#1 / #2 / #3 / #4 / #5 /
#6 / #7 / #8 / #9 / #10 /
#11 / #12 / #13 / #14 / #15 /
#16 / #17 / #18 / #19 / #20 /
#21 / 

 


#1 門

 薄水色の空に、小さなピンクの蝶が群れをなして飛んでいるように見える。
 桜はもう散りぎわ。新学期はとうに始まっている。

 築町美春(つきまちみはる)は、四月の半ばになってようやく新しい高校へ登校してきた。学校にはその理由を告げてある。たった一人しかいない家族が……母が、倒れてしまったのだ。
 おかげで祖母の家に身を寄せる事になり、その近くの高校へ急きょ転入ということになった。

 二年生だというのに、なんとなく新入生のように緊張して、その大きな門をくぐった。

 不思議だった。
 大きな門だなあ。
 まるで閉じ込めたら逃がさないとでも、言わんばかりの大きさだった。
 背が高く、大きな外観。
 門を構成する鉄柱は、分厚く、重い鉄板を白く塗って、何列も立て並べている。


 挨拶……というか、クラスメイトへの自己紹介はパパッと済まされた。ちょうど体育の授業だったせいで、担任でもない保健体育科の教師には、名前を叫べば十分と思ったようだ。
 ミハルもまあ、別にそれでよかった。

 ただ、問題は体育館を分断する白いネットの存在、いや、ネットの向こう側にいる存在だった。

 ボケッとしているミハルに、新入りをからかうように女子たちが顔を寄せた。
「来て早々ヤバいもん見つけるよねー」
 ケラケラと笑い声が重なる中、ミハルは、そのヤバいもんと目が合ってしまった。

 体育館の隅で立つ、一際背の高いジャージを着こんだ男子。
 ただ、片目は包帯が巻かれている。10メートル以上離れた相手の片方の目と視線が合っただけだが、妙に焦りを感じた。


 この変な落ち着かない気持ちはなんだろう。
 恋とか一目惚れとかいう、簡単なものなら、ラッキーだと思えるけれど、どうもそういうものじゃない。

 これは、もしかすると、考えたくないけれど、やっぱり、…………『殺気』というやつじゃ、ないだろうか……。




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#2 接近

 ネットの向こうでは男子たちが、のそのそとバレーボールで遊んでいた。
 そう、練習というより、ボールと、けだるーく遊んでいる、そんな感じだった。
 教師も体育館の端にパイプ椅子を持ってきて、ただ座って雑誌を読んでいるくらいだから、そうなるのも当たり前だった。

 不意にふざけて誰かが強く打ち上げたボールが、体育館の天井にハマり込んだ。
 鉄骨のようなものがぶわんと共振する音が、体育館全体に響く。
 おかげで男子も、ミハルたち2年の女子も、つい手を止めてをの様子を見つめることになった。

 高さ十メートルほどある天井に張り巡らされた鉄骨。
 その枠組みが網になっている部分に、ボールがガッチリとはまり込んでしまった。

 あーあ、という嘆息。
 教師も仕方なく椅子から立ちあがって、届くはずの無いボールを下から見上げている。
 新しいボールを探して動き出す男子たち数人と、よくあることだと授業を再開する女子たち。

 その体育館の中にいる人間、誰もが自分の時間を取り戻そうとしていた時だった。


 最初、パーンという軽い破裂音がした。
 と思った次の瞬間には、ボールが突き刺さった部分が爆発し、梁(はり)がまるで矢のように四方八方へと発射される。
 床に突き刺さる太い鉄骨。

 悲鳴さえも恐怖で静まる。

 ド、ン。
「え? バレーボールが破裂しただけでしょ?」
 ゴ、ン。ゴガ、ッガ、グガン……
 まるでドラムを打つように、その大きな音は鳴りやまない。人を串刺しにしそうな鉄骨と、コンクリートのような塊が落ち、床をグシャグシャに破砕してゆく。

 もうすでに同級生たちは仲良し同士の誘導で、体育館から逃げている。
 今日転入したばかりの、腰を抜かして横たわってしまったミハルの事など誰も見向きもしない。
 恐怖で頭を抱え、体をダンゴムシのようにして精一杯防御するが、恐ろしい音と、床から伝わる破壊の振動は、ミハルの小さい心臓を潰さんばかりだ。
 
「おい、寝てどうする」

 ミハルの耳に男の声がして、ほんの少しだけ顔を覆っていた手をずらし、相手を見上げた。

 左目から頭部にかけて包帯を巻きつけた男が、ミハルの真上から覗き込んでいた。

 その彼の後ろから、さらに身長2メートル越えの大きな男子が、顔を出して無言のまま笑っている。



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#3 

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#4 

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#5

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#6に続く≫